【絵本】『ちいさいおうち』バージニア・リー・バートン

 

ちいさいおうち

ちいさいおうち

 

 

作者のバージニア・リー・バートンは、1909年アメリカ生まれの絵本作家。

代表作のひとつである『ちいさいおうち』は1942年に、彼女の次男に向けてつくった絵本とのこと。

「古きよきアメリカ」という時代背景の中でつくられた絵本なんだね。

 

お話の流れはこんな感じ。

ちいさいおうちはのどかな田舎に建っていた。春夏秋冬、四季折々の自然と人々の暖かい営みに囲まれて、静かにすごしていた。しかしある時、おうちの前の道が舗装され、たくさんの車が行き交うように。やがて電車が通り、背の高いビルが建ち並び、おうちの周りはすっかり都会になってしまう。人々はせわしなく季節も感じられない。おうちに住む人はいなくなって、どんどんボロボロになっていく。しかしある日、おうちに住んでいた人の孫が偶然にもおうちに目をとめる。その人は自分の祖母の想い出をなつかしみ、おうちを田舎に移設する計画を思いつく。街の人々が見守るなかおうちは運ばれ、以前建っていた場所にそっくりなのどかな田舎に移される。また静かな日々を手にしたおうちは、もう二度と都会には行きたくないと強くおもう。

 

バージニアは、きっとどんどん都内化され失われていくアメリカの田舎の風景に、強い愛着を感じていたのではないかな。

きっと、そういう時代だったんだね。

ラストに、わたしはとても、もの悲しさを感じてしまった。

だって、静かな田舎に移され再び平穏な日々を取り戻したおうちだけど、またそこも都会になってしまうリスクがあるでしょう。

今度はいつまで、この平和な毎日が続くんだろう。そんな不安をかかえながらおうちはただただそこに建ち続けるしかないんだなあ。

そう思うと、切ないし、かなしい。

 

それはさておき、この絵本、絵がとても素晴らしい。

アメリカンカントリーののどかさも、都会のせわしなさも、圧巻の絵で心に響く。

おうちはそのまま、周りがどんどん変わっていく様子が、そのスピード感がリアルに感じられる。

絵を眺めるだけでも、小一時間楽しめる、そんな絵本。

もともと建物や街の絵が好きだからかな、この絵本の絵はとてもいい。

 

ちょっと文字が多いから、小学生くらいの子ども向けかな。

大人でも十分楽しめる。