【読書】『火星に住むつもりかい?』伊坂幸太郎

 

火星に住むつもりかい? (光文社文庫)

火星に住むつもりかい? (光文社文庫)

 

 

伊坂幸太郎さんの新しいやつ。

今作もすごかった。

現実感のあるディストピア群像劇、って感じ。

舞台は例のごとく、仙台。

仙台ってところが、妙にリアリティを醸し出している気がする。

まあ仙台チョイスは、作者の母校が東北大学だから、という理由だと思うけど、リアリティの増幅には一役買ってると思う。

最初からショッキングな話で幕をあけ、胸が締め付けられるようなストーリー展開に挫折しそうになる。

かなりのストレス。つらくて途中で読むのをやめたくなる。

でも、このストレスの先に、視界が開けるような爽快な開放感を味わうことができるのだから、と言い聞かせ、読み進める。

そうしたら、ほらね、やっぱり伊坂作品は裏切らない!

見事に伏線が回収され、ストーリーが思いもよらなかった方向に展開していく。

つらかったけど…読んでよかった!この爽快感はやめられない。

 

テーマは「現代の魔女狩り」。

公権力が暴走し、なんとも息苦しい監視社会ができあがる。

大衆はその状態を甘んじて受け入れつつ、「魔女狩り」の処刑シーンに興奮し、残酷性を加速させる。

生々しいギロチンの描写に目を背けたくなる。

ここまでがなんともつらくて、ストレスフルだった。

そこを乗り越えると、ストーリーの速度がどんどん増していき、もう途中でやめるなんてできないんだよね。

つらく苦しい中に登場する一人のヒーロー。

公権力に逆らって、おかしな社会に風穴を開けてくれるのでは!と期待が膨らむ。

でもね、単なる正義の味方ではないところがミソ。

人が正義をふりかざす時には、いろいろな理由があるもの。

その描き方が見事でした。

こっちの正義は、あっちの悪。

要はバランスだよね、っていう言葉に、全てが集約されていく。

 

はぁ〜、面白かった!

読みごたえ、満点だったぜ。